横浜市南区弘明寺のアレルギー科・耳鼻咽喉科
いでい耳鼻咽喉科医院

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【No.147】ラストレター②

この時期になると、私は毎年1通の年賀状を思い出す。もう25年以上前の元旦のことだ。

大学のある先輩から何時ものように年賀状が届いた。その先輩は大学の耳鼻科の3年先輩で、たまたま一緒に仕事をする機会はなく、学会や忘年会などで顔を合わせ、立ち話をする程度だった。外見は年齢よりもずっと若々しく、体を毎日鍛えているそうで健康的な印象だった。優しく、後輩にも毎年1月1日に年賀状が届くように送る気づかいの出来る人だった。この年以前に受け取った先輩からの年賀状は、私が出すようなありきたりの挨拶しか書かれていなかったように思う。定かではないが、全く記憶がないことから推測すると、そうであるに違いない。

でも、この年に受け取った年賀状には、墨で大きく以下のように書かれていた。

健康第一

それだけだ。謹賀新年、明けましておめでとう、今年もよろしくなどの言葉は一切なかった。

それから1ヵ月後に衝撃的な事実をFAXで知ることになる。この先輩が大腸癌のために亡くなったと。まだ、40歳になったばかりだった。若すぎる。医院を開業したばかりで、小さな子供もいたはずだ。大腸癌が見つかった時には、既に転移があり、入院治療を続けていたにもかかわらず、助からなかった。そのベッドで年賀状を書いた。どんな気持ちで書いていたのだろう。死期が近いことを知っていたに違いない。「健康が第一だから、十分に気を付けて、俺のようになるな」という遺書なのか。謹賀新年や明けましておめでとうといった言葉は必要なく、今年もよろしくなどといった言葉は全く意味がなかったのだろう。

私には葬儀の知らせが来なかった。そんな親しくもない後輩にまで気を使ってくれる優しさを噛みしめずにはいられなかった。その後、この先輩の年賀状を必死で探したが見つけられなかった。たぶん、年賀の抽選で当選してないのを確認してから、愚かにも捨ててしまったのだろう。でも、私の心の中にはその健康第一の文字がはっきりと刻まれている。忘れようがない。

私は毎年1月に検診を受けている。1月は忙しい時期なので、面倒に感じられることもあるが、何故か検診を受けないといけないような気がしてしまう。病気の早期発見をしてもらうことよりも、検診受けないと先輩に申し訳ない気がしてしまうためだ。

大半の人が死ぬときに、一番悔いることで多いことは?

もっと健康に気をつければ良かった、ということだ。

最後に、このエッセイを読んで頂いた皆さんに

健康第一