2024/04/10
皆さん、一番好きなクラシックの作曲家は誰でしょう?
モーツァルトを挙げる方も多いはずです。そこで、今日はモーツァルトの話をいたします。
モーツァルトはわずか35歳で命を落としました。その間に700曲を超える名曲を残しました。そんなモーツァルトが亡くなった原因を、多くの専門家が調べていますが、まだ一定の見解は出ていません。映画アマデウスの影響で、ライバルのサリエリの陰謀で殺された、と思っている方も多いようです。2009年、イギリス、ウィーン、オランダの研究者らが、モーツァルト死亡時のウィーンの疫学研究を実施しました。彼らの結論は、モーツァルトはレンサ球菌に感染し、連鎖球菌性咽頭炎から糸球体腎炎を合併し、命を落とした可能性がある、というものでした。
この病気は耳鼻咽喉科領域の疾患でもあり、今日はこの病気について解説をしていきます。
連鎖球菌性咽頭炎は、連鎖球菌という細菌が主に扁桃に感染して発症します。症状は、主に激しいのどの痛みと発熱。扁桃は赤く腫れあがり、白い膿がたくさん付きます。舌は赤くぶつぶつができ、イチゴ舌とも呼ばれます。手足に赤い発疹が出ることもあります。他の風邪と異なり、鼻や気管の症状は少なく、鼻水や咳はあまり出ません。
主に小学生以下の小児に多く見られますが、大人でも体力や免疫力が落ちているときに発症します。当院では子供から感染する親が多い印象です。
たいていの医療機関では、インフルエンザ検査と同じ、約10分で結果の出る迅速検査が出来ます。のどを綿棒で擦って検査をします。
治療では、ペニシリンなどの適切な抗菌剤を10日間内服することが推奨されています。途中で中止すると、再発や合併症をおこすリスクが高まります。症状が強い場合には点滴や入院治療も検討します。
感染力が強い細菌ですが、抗生剤を内服し、24時間経過して、解熱すれば、他の人に感染する可能性は少なくなります。心配な方は自宅でもマスクを付けるようにしましょう。
合併症として、一番問題なのは腎臓の障害。腎不全になり、死に至ることがあります。現在では腎透析を繰り返すことで、助かりますが、モーツァルトの時代には難しかったのです。
私が最後に勤めた日本鋼管病院の外来には、手首に水色のタオル地の布を巻いていた40歳くらいの看護師がいました。彼女も、ただの風邪だと思っていたら、腎不全にまでなり、一生腎透析が必要な体になってしまいました。水色の布は腎透析の時に針を刺すためのシャント(動脈と静脈を直接繋げたもの)を守り、目立たなくしていたものでした。この生活から完全に離れるためには、腎移植しか有りません。