2024/05/01
声を痛め安い人に対して、お腹から発声することを指導してきました。このことは他の耳鼻咽喉科医師や音楽の指導者も行ってきたことですが、なかなか十分には伝わっているとは思えません。そこで、具体的な方法で、優しく解説をしていきます。
まずのどを痛めやすい方は、主に3つの原因があります。
①のどにむりな力が入っている
②乾燥
③細菌やウィルスに感染しやすい
今回はその中の①を説明することになります。
のどは皆さんが考えている以上に強いのです。ですから、適切な管理をすれば痛めにくいし、速く治せます。発声に関しては、通常の声を出しさえすれよいのです。逆に悪い発声とは、大声、怒鳴り声、ささやき声、無理な音程の声など。これらは、いずれものどに特別に力を入れないと出ない声なのです。これらが全て揃いやすいのが、カラオケです。まだ短時間ならばいいですか、長時間や頻度が高くなると、確実にのどに負担がかかります。
一番間違えている人が多いのは、ささやき声です。声や喉の痛みを速く取ろうとして、わざとささやき声を出している人がたくさんいます。ささやき声は、のどをあまり動き過ぎないように変に力を入れて発声しています。これは、車でいうとブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるようなもの。そんなことをしていたら、車だって故障してしまいます。
お腹から声を出すと、横隔膜や体幹の筋肉に力が入り、肺の中の空気を効率よく出せ、響きのいい声になります。ですから、プロ歌手や演劇では必ずマスターしなければいけないことです。ご存知な方も多いと思いますが、オペラでは、マイクなしで、巨大なオペラホール全体に声を伝えることが出来ています。
お腹から発声するドリル
皆さんお腹に手を当てて下さい。
綱引きなど集団で運動する前のかけ声の要領で次の言葉を言って下さい。
エイエイオー!
どうです。お腹に力が入りましたでしょうか?
よく分からなかった人は、もう少し大きな元気な声を出すつもりで再度トライして下さい。今度はお腹に力が入ったのが分かったはずです。この発声を、いつも普段からやって、癖にして下さい。
お腹から発声するメリットは他にもたくさん有りますよ。まず、力が入りやすくなります。例えば、荷物を持ち上げる時に、えい!と声を出して、お腹に力が入るようにすると、楽に上がります。当院のスタッフがスポーツジムで筋トレマシーンをやりすぎて、手を痛めてしまいました。ですから、同様の方法で力を入れるようにアドバイスをしました。
また、何時もお腹から声を出すようにしていると、体幹筋も鍛えられ、体の姿勢が安定します。そのため、腰や膝を痛めにくくなります。更に、お腹周りがしまり、ウェストも小さくなることも期待出来ます。ここまで伝えたらば、さすがにヤル気が出たはずです。