横浜市南区弘明寺のアレルギー科・耳鼻咽喉科
いでい耳鼻咽喉科医院

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【No.166】なぜ中耳炎では再診が必要か?フジコヘミングの難聴

昨日、幼児の母親から、言われた質問です。ただ治っているのを確認するだけのために、再度クリニックに来ることは意味がないと、感じられることもあるでしょう。結論から言えば、難聴が残り、後の人生に影響が出ることがあるからです。

皆さん、ピアニストのフジコヘミングをご存知ですか?

先日、フジコヘミングは膵臓ガンのため92歳で亡くなりました。スウェーデン人の父と日本人の母から生まれ、小さい頃から母の厳しいピアノ指導の甲斐もあり、若い頃から名が知られ、将来を期待されていました。しかし、国籍を失ったり、様々な苦悩を経験する中で、いつの間にか、世間から忘れ去られていきます。たまたま、NHKの特集で取り上げられ、自分の人生を重ねたかのようなリスト作曲のカンパネラの演奏で、爆発的に人気が出ました。私の母も、生前、いつかは聞きに行きたいと願っていましたが、残念ながら叶いませんでした。

そんなフジコ・ヘミングが耳が聞こえなかったのは、ご存知でしょうか?

フジコヘミングが若い頃、ベルリン音楽学校に留学し、レナード・バーンスタインに才能を認められました。しかし、名門ホールでのデビュー直前に風邪をこじらせ、中耳炎になってしまいました。十分な治療を受けられなかっため、右耳は完全に聞こえなくなり、左耳にも難聴が残りました。そのため、ピアニストとしてのチャンスや仕事を失い、貧しい生活を長く続けることになります。

中耳炎は、現在では適切な薬で、大半が完治します。しかし、一部の人は、鼓膜に穴が開いたままになったり、耳垂れが続いたり、鼓膜の奥が壊れたままになって、難聴になることがあります。この状態を慢性中耳炎と言います。手術で治せる場合も少なくないのですが、進行して内耳の障害が出てしまうと、聴力は治せません。

そのため、中耳炎になった場合には、一般的には再診が必要で、上記の状態がないか確認が必要なのです。